今日は水声社「ヘンリー・ミラーコレクション」の9、10巻を買った。

ヘンリー・ミラーは私の細々した読書遍歴の中でも中心的な役割を果たす作家だと思う。きっかけは確か高校生のときに読んだ大江健三郎の本だ。主人公が本屋でミラーの「北回帰線」がないか店主に尋ねる行があったのを覚えている。

ミラー作品では衒学的な言葉遣いや過激な表現が多くクセが強い。有名な「北回帰線」は特にそうだ。私が最初に読んだのは「南回帰線」で、20代後半の主人公(=ミラー本人)の精神的な思索に幼少期の体験に裏打ちされた原始的な感情の描写を織り交ぜたような作品だ。物語からも滲み出てくるミラーの人間的な魅力にすっかりハマってしまい、何度も読み返した。

「南回帰線」を読んでからというものの、本屋にいったときにはミラーの作品がないか探すのが習慣になった。しかし高校生〜大学生の私が訪れた本屋にはあまり置いていなかった。古本屋ばかりだったのがよくなかったかもしれない。新刊を何冊も買えるほどお金がなかったのだ。ジュンク堂で水声社の「ヘンリー・ミラーコレクション」があることを知ってからは少しずつ端から読んで行った。こちらは新刊だった。少しずつ買っては読み続けた。

「ヘンリー・ミラーコレクション」は全10+1巻ある。気まぐれに買い進めていたので期間が長く開くこともあった。最後に買ったのは数年前に8巻の「ネクサス」だった。そこでぱったり止まっていたのが、今日の2冊でまた再開したわけだ。他のシリーズに収録された既読の作品の巻を飛ばしていることに目をつむればほぼ揃ったことになる。もう少しで「ヘンリー・ミラーコレクション」の旅も終わりだ。